企業・事業・商品のブランド階層。ブランド構築・展開方針
ブランド構築・展開方針
ブランド戦略を策定する
ブランドは一朝一夕にできるものではなく、中長期的な計画の下、戦略的に行わなければならない経営課題です。では、企業は価値あるブランドをどのように構築していけばよいのでしょうか。ここでは、ブランド階層や経営資源の投下方法への理解を深め、企業の成長ステージや市場特性を考慮しながら決定して行くための、ブランド構築にまつわる知識を伝授していきます。
4つのブランド階層
ブランド階層を理解する
ブランドには大きく4つの階層が存在します。「トヨタ」「ホンダ」「日産」などのコーポレート・ブランド(企業ブランド)、「TOYOTA」「LEXUS」などの事業ブランド、花王の「植物物語」のように石鹸・シャンプー・リンスなどいくつかの製品カテゴリーをブランド毎に展開するファミリー・ブランド、「エコナ」「サランラップ」など個別商品をブランド化するプロダクト・ブランドなどが階層にあたります。 どのブランド階層であってもブランドの構成要素や評価・マネジメント手法は同じですが、ブランドの成長率やブランドイメージの変化により、ブランド整理や再構築が必要なこともあるため、企業はブランド戦略にあたり、展開するブランドを体系化し管理する必要があります。
ブランド階層 | 内容 | ブランド名 |
コーポレート・ブランド |
企業名をはじめ、その企業名で展開する製品・サービスの全て |
TOYOTA、パナソニック、アップル、資生堂など |
事業ブランド |
企業内の事業単位でブランド展開される、製品・サービスの全て |
トヨタ自動車の「TOYOTA」「LEXUS」など、ファーストリテイリングの「ユニクロ」「gu」など |
ファミリー・ブランド |
独立したブランド名の下、複数カテゴリーの製品・サービスに展開する全て |
花王の「植物物語」の展開する石鹸・シャンプー・リンス、エルメスの展開する「時計」「アクセサリー」「洋服」など |
プロダクト・ブランド |
個々の製品・サービスを展開するもの | 「エコナ」「サランラップ」「ユンケル」「カロリーメイト」「ガリガリ君」など |
3つのブランド戦略
ブランド戦略を把捉する
ブランド戦略には、コーポレート・ブランドの下にブランドを展開して行く「マスター・ブランド戦略」と、複数のブランド展開により市場シェアを獲得していく「マルチ・ブランド戦略」とがあります。それぞれにメリット・デメリットがあり、ブランド利用時にはその方針を策定していかなければなりません。
●マスター・ブランド戦略(例:ヴァージン社)
マスター・ブランド戦略は、コーポレート・ブランド(アンブレラ・ブランド)の下に複数の事業や製品カテゴリーを展開していく戦略で、ひとつのブランドにマーケティング資源を集中投下することでマーケティング効率を高めることができる一方、ひとつのブランドに依存するリスクや、成長の限界というデメリットがあります。
●マルチ・ブランド戦略(例:P&Gジャパン)
マルチ・ブランド戦略は、多数のブランドをポートフォリオに持ち、同一カテゴリーで複数ブランドを展開することにより市場シェアを獲得していく戦略で、複数のブランドによるリスクの分散と多角的な成長の可能性を秘める一方、マーケティング資源の分散投資による非効率が否めません。
●サブ・ブランド戦略(例:Apple社)
マスター・ブランド戦略とマルチ・ブランド戦略を組み合わせる方法にサブ・ブランド戦略があります。サブ・ブランド戦略では、既に展開するコーポレート・ブランド(企業ブランド)に新しいブランドを結合させることで、マスター・ブランドの保証の下、個別のブランドをアピールしていくことができます。但し、ブランド体系が複雑になることから、管理が難しくなるデメリットを併せ持ちます。
マーケットにより異なるブランド戦略
日本企業を俯瞰してみると、マスター・ブランド戦略が最も多く一般的ですが、化粧品やアパレル業界ではマルチ・ブランド戦略が一般的になりつつあります。これは、マルチ・ブランド戦略で展開する外資系による影響が大きく、競合がグローバル化していることが背景にあると言えます。